滲出性中耳炎
滲出性中耳炎とは
滲出性中耳炎は、診断技術の進歩とともにかなりの率でみられることが明らかとなりました。幼少児の難聴の原因として最も多い疾患です。言語の発達する4~5歳から小学校の低学年に多く、また、何度も繰り返したり、治りにくい例も多いために大きな問題となっています。有病率は諸家の報告によりますと、6歳から8歳では3~9%、9歳では0~6%といわれています。
原因・誘因
耳管の機能障害によって起こります。風邪や急性中耳炎の後に起こることがほとんどで、鼻・副鼻腔やのどの炎症が原因となったり、なおるのを妨げていることが多く、幼少児ではアデノイドが大きいために起こることもあります。一方、成人では鼻咽腔の腫瘍が原因のことが稀にあるため注意する必要があります。耳管は鼓膜の奥にある中耳腔と鼻の奥(のどの上部)とをつなぐ管で、つばを飲み込んだ時などに空気が出入りして中耳腔の気圧を調節し、また、中耳腔にたまった液を排出する働きがあります。鼻・副鼻腔やのどの炎症が耳管にも及ぶとこれらの働きが悪くなるために鼓膜が内側に陥凹したり、中耳腔に滲出液がたまったりします。
耳管:鼻の奧と中耳をつなぐ管で、中耳を換気する役目があります。
症状
成人では耳がふさがった感じや圧迫感、難聴や耳鳴、自分の声が響くなどの症状を訴えます。一方、耳痛や発熱などはほとんど無いため、この疾患が最も多い4歳から7歳位までの小さなこどもの場合は自分から異常を訴えることが少なく、また、難聴があまり高度ではないために周囲も気付かないことが少なくありません。テレビの音を大きくする・呼んでも返事をしない・あるいは、あまりしゃべらなくなったとかで、初めて周囲が気付くことも多いようです。
診断
ほとんどの場合、鼓膜の観察とティンパノメトリー検査(鼓膜の柔らかさを調べる検査)を行うことによって診断がつきます。難聴の程度を正確に知るためには聴力検査が必要になります。
治療
鼻・副鼻腔やのどに炎症などの疾患がある場合には、それを一緒に治すことが大切です。鼻やのどの炎症がおさまると滲出性中耳炎も自然に治る場合が多々あります。それでも、良くならない場合や重症の場合には、耳管通気療法(鼻・耳管を通じて中耳腔に空気を送る治療法)や鼓膜切開しての鼓室処置(鼓膜を麻酔して痛みを感じないようにしてから鼓膜を切開し、中耳腔の液を吸引除去)を行います。
また、なかなか治りにくい場合や繰り返し発症する場合、慢性中耳炎になりそうな重症の場合では、鼓膜にチューブを入れて中耳を換気するための手術(鼓膜換気チューブ留置術)を行います。入れたチューブは、通常は、特殊なタイプ以外は自然に外耳道側に押し出されます。そのため、難治性の場合には何度もチューブを入れないといけない場合があります。
何度も再発したり、なかなか治りにくい場合もありますが、根気よく治療を受けることが大切です。
右耳・滲出性中耳炎
右耳・鼓膜切開直後